先輩だった長谷川健太さんからは、今でもいじられます

 サッカーのほうでは、1年生から背番号10番をもらうことができました。当時3年生の先輩だった長谷川健太さん(元日本代表、現・名古屋グランパスエイト監督)からは、今でも「前年に俺たちは全国大会で優勝しているのに、1年生だったお前がなんで10番だったんだよ」って、いじられます(笑)。

 サッカーの成績としては、1年生で静岡県大会の決勝で4得点して、結局、県大会ではMVP、新人王、ベストイレブン。全国大会では得点王。しっかりと清水東の10番の責任を果たせたことで、サッカー王国の静岡県内では、注目を集めることになりました。

 あの頃は、テレビに出演することもありましたし、『明星』『プチセブン』などの取材も受けましたね。試合だけでなく、練習からたくさんのファンの女の子が集まってくるので、「武田が出場すると風が止む」と言われていました(笑)。

 高校生がこれだけ注目をされてしまうと、調子に乗ってしまうと思われるかもしれませんが、そんなことは本当になかったんです。決して恵まれていなかった家庭環境の中で鍛えられたメンタルと、サッカーが何より大好きという気持ちがあったので、どんなに注目されても、重圧があっても、それを跳ね返すほどの向上心と貪欲さがあったからだと思っています。やっぱり、僕にはサッカーしかないと思っていましたからね。だから、道をそれてしまうことはなかったです。というか、何か悪いことをしても、静岡では顔が知られてしまっていたので、すぐに見つかってしまいますしね(笑)。

武田修宏(たけだ・のぶひろ)
1967年5月10日、静岡県浜松市生まれ。静岡県立清水東高等学校卒業後の1986年に読売サッカークラブ(現・東京ヴェルディ1969)へ入団。同年に新人王とMVPを獲得するなど大活躍し、現役通算で4度のベストイレブンに輝いた日本を代表するFW。01年シーズンをもって引退し、その後は各種メディアに多数出演。また、全国でサッカー教室、サッカー普及活動を行っている。