1990年代、ドラマ『逢いたい時にあなたはいない・・・』『悪魔のKISS』などで活躍し、名を広めた大鶴義丹。小説家や映画監督としての顔も持ち、現在は、主戦場を舞台に置く大鶴さんは、紅テントを象徴とする「状況劇場」で知られ、今年の5月に逝去したアングラ演劇の元祖・唐十郎を父に、アングラの女王と呼ばれ、ドラマ『3年B組金八先生』でも知られた李麗仙を母に持つ。そんな大鶴さんの語るTHE CHANGEとはーー。【第3回/全5回】

大鶴義丹 撮影/冨田望

 大鶴さんの父・唐十郎さんが亡くなったのは今年の5月4日。大鶴さんは舞台公演中だったために看取ることがかなわなかった。翌日、カメラの前で気丈に会見した大鶴さんは「最後まで粋な演出をする父だなと」と口にしたが、なによりも舞台を愛した唐さんにとって、舞台で引っ張りだこの息子の姿は、誇りだろう。

「オヤジは“三度の飯のように演劇をして芝居をして”といつも言っていました。だから仕事を早く終わらせて旅行に行こうとか、そういう考えは全くない人でしたね。ハワイにだって行かないし、たぶん行く気もないし、熱海も行かない。でも母親は意外と常識人だし普通なんです。アスリートタイプで、努力が好きな人。だから、父とはぶつかってよく怒ってました。家族旅行にも行こうとして、行くには行ったんですけど……」

――どこに行かれたんですか?

「小学生のころに伊豆とかに行きましたよ。でも旅行に行っても、オヤジは本を読んだりしてて、ホテルから出ない。母親は母親で“美術館に行きましょう”とか言うんだけど、別にそんなの僕は面白くなかったんで、“興味ない”とか言うと、母親は“じゃあ、私は行ってくるから”ってひとりで行っちゃう。オヤジはホテルの部屋でごろごろ、自分はホテルの前の小さな遊園地でひとりで遊んでるっていう」