CITY POPブームについてどう考えているか

“CITY POP”の世界的認知の中心的存在の韓国のDJ、NIGHT TEMPOをはじめとする2020年代の音楽シーンにも、売野さんはアンテナを張っている。長く日本のポップスに携わってきた巨匠にとって、いまのシーンはどう映っているのだろう。

「NIGHT TEMPOは、日本の“CITY POP”や歌謡曲、昭和文化などに造詣が深く、ものすごくよく知っていますね。オメガトライブ1986のカルロストシキさんのことも、荻野目洋子さんのことも、菊池桃子さんがいたRAMUも大好きだし、誰も注目しなかったアルバムにひっそりと収まっている曲まで知っているほどです。そうしたJ‐POP愛がある人が、世界に向けて日本のポップスの魅力を発信してくれたことは嬉しいし、彼がデフレから抜け出せない日本に勇気をくれたと思っています。

 レコードからCD、ダウンロード、そしてストリーミングと、音楽の聴かれ方は確かに変わりました。ただ、それは特別ではなく、これまでの音楽シーンも常に変化してきました。70年代にアイドルが盛り上がった後、シンガーソングライターが出てきて、再び80年代にアイドルが隆盛しましたよね。それとは別軸でニューミュージックの流れもありましたし、歌謡曲と洋楽的要素を取り入れたシティポップスが人気を博し、90年代にはバンドブームが起こりました。そうした流れを受けて、今の多様な音楽があるわけです。