売野さんが尊敬する作詞家・山川啓介氏

売野雅勇 撮影/杉山慶伍

 作詞においても、継承はなされていると思います。僕は『哀愁のカサブランカ』の日本語詞が大好きで、作詞家の山川啓介さんを尊敬しています。僕が作詞家デビューした『星くずのダンス・ホール』や、チェッカーズの『ジュリアに傷心』には、そのエッセンスがちりばめられているんです。

 山川さんがいなければ、僕はそれらの歌詞をかけなかっただろうと思いますし、僕はその継承を意識しながら歌詞を書いてきました。僕の歌詞を聴いて育った人の中には、無意識に僕の歌詞を土台にして歌詞を書いている人もいるかもしれません。そうやって音楽は地続きにつながっていくのだと思います」

 偉大な作詞家のレガシーを受け継ぎ、さらに下の世代がそれを共有していく。その大きな流れのなかで、売野さんはいまも傑作を生み出し続けているのだ。

(取材・文/キツカワユウコ)

うりの・まさお
 1951年2月22日生、栃木県出身。上智大学を卒業後、広告代理店に入社。コピーライター、ファッション誌の編集長などを務めたのち、1981年にシャネルズ(のちのラッツ&スター)の『星くずのダンス・ホール』で作詞家として活動を開始。翌年、中森明菜の『少女A』の作詞を担当、以来チェッカーズ、河合奈保子らに歌詞を提供、現在に至るまでその歌詞が多くの人に愛されている。