「政治家にはなれない」と思った理由

――政治家を敬遠していた理由というのは、やはりお父様の姿を見てきて思ったことなのでしょうか。

「政治家の仕事って、正解がないんですよ。例えば、“あなたのおかげでうちの業界は助かりました。ありがとうございます!”っていう人がいたとしたら、その何倍も反対意見の人がいる。サイコロの目でいうと、こちら側から見れば1だけど、その反対では6に見えている人がいて、感謝する人と恨む人が常に毎回いるわけですよ。そういう世界だから、恐怖しかない。

小泉孝太郎 撮影/三浦龍司

 政治家は国民の生命と財産を守るという大きな使命を抱えていますが、僕には “これがあなたたちの生命財産を守れる方法です。これがみんなにとっての幸せなんです“という答えはとても出せない。だから自分は政治家になれないと思ったんです」

――子供のころから現在までで、父親への思いに変化はありますか?

「とんでもなく強じんな精神力と体力を持った人だと、年々感じます。僕は今まで、父が愚痴をこぼしたり、コメンテーターや政治評論家の人からどんなことを言われようと、だれかの悪口を言ったりしたことを一度も見聞きしたことがないんですよ。よくあの荒波にくじけなかったなと思うし、長年にわたって “小泉純一郎”をやり遂げたハートの強さというのは、自分が年齢を重ねてより一層感じますね」