川島なお美の働きかけもあってかなった“上京”

 ヒーローショーは展開が決まっていて、何度もくり返してやっているうちに飽きてきた。そこで、大筋からは外れないかたちでオリジナリティーを入れていくうちに、“演じる”ことに惹(ひ)かれていった。

「なぜだか分からないんですけど“演じることを仕事にするんだったら、東京に行かなきゃ!”という思いに突き動かされたんです。でも、何をどうすればいいのか分からない……。そんなとき、何度かイベントで顔を合わせるうちに仲良くなった、当時アイドルだった川島なお美ちゃんに相談したら、事務所の人が“じゃあ、とりあえずうちに来る?”みたいなことになったんです」

 川島なお美の現場マネージャーという仕事を得て上京したものの、肝心の役者への道は一向に開けない。半年がたったころ、大阪時代の知人と連絡をとったことで、野添の人生は大きく動き出すことになる。

「彼とは会社は違うけど、同じスーツアクターで、顔見知りだったんです。そしたら彼が“自分がアシスタントをしているアクションの先生が、いまSETという劇団でアクションの振り付けをしていて、すごくおもしろいんだよ。そこはどう?”って言うんです。とりあえず見てみるか……くらいの気持ちで、池袋のシアターグリーンという小さな劇場に足を運んだんですが、これがもう、めちゃくちゃおもしろくて。見終わってすぐに“ここで役者をやりたい!”と決めていました」

 野添義弘が、三宅裕司率いる“ミュージカル・アクション・コメディー”劇団スーパー・エキセントリック・シアターに出会った瞬間である。

野添義弘 撮影/有坂政晴

野添義弘(のぞえ・よしひろ)
1958年7月3日生まれ、大阪府出身。1982年に劇団スーパー・エキセントリック・シアターに入団。以来、劇団の本公演に出演するとともに、アクション、殺陣の振付も担当。主な出演作は、劇団本公演のほか、映画『真田十勇士』(’16年)、ドラマ『ワカコ酒』(BSテレ東)、『アンナチュラル』(TBS)、『コドモ警察』(フジテレビ)、NHK大河ドラマ鎌倉殿の13人』、連続テレビ小説虎に翼』、『新宿野戦病院』(フジテレビ系)、舞台『志村魂』(’08「」界転生』(’21年)など。

◆作品情報
劇団スーパー・エキセントリック・シアター
創立45周年 第62回本公演
『ニッポン狂騒時代〜令和JAPANはビックリギョーテン有頂天〜』
2024年10月17日(木)〜10月27日(日)
東京公演・サンシャイン劇場

2024年11月8日(金)〜10日(日)
神戸公演・AiiA 2.5 Theater Kobe
脚本:吉井美奈子 演出・三宅裕司
出演:三宅裕司 小倉久寛 劇団スーパー・エキセントリック・シアター
https://www.set1979.com/stage/2024/