瀬戸康史の転機は「更地になったこと」

──現在、好きな仕事しかしていないとのことですが、俳優人生で、ここが自分の分岐点だったと言える瞬間はありますか?

「これはいろいろなところで話しちゃってるんですけど、お芝居の面で言うと、『マーキュリー・ファー』(2015)という舞台です。白井晃さんに演出をしていただいたのですが、そこで何もかもバッキバキにされまして(苦笑)。もう完全な更地にされてしまったんですよ」

──更地に(苦笑)。

「そう。それが良かったんです。そのときに、“なんか変わったかも”と感じました。更地になって、そこからはもうプラスで作っていくだけだった」

──落ち込んだりは?

「もちろん落ち込みましたよ。でも、どんどん余計なものが落ちていったような感覚というか。そこからはもう、どの仕事も自分の中では大成功です」

──どの仕事も大成功!そう思えるのは素晴らしいことです。

「やってよかったと自分で思える仕事しか、ほぼほぼやっていません」

 バッキバキにされて更地になったことで、ゼロから立ち上がり、そこからはどの仕事も自分の中では大成功だと断言できる瀬戸さん。その語りに迷いはない。出会う人、出会う人、みなを魅了する笑顔の奥に強さと豊かさも感じさせる瀬戸さんは、これからもどんどん「大成功」な仕事を積み上げていってくれるだろう。

瀬戸康史 撮影/有坂政晴

せと・こうじ
1988年5月18日生まれ。福岡県出身。’05年にデビュー。’08年には平成仮面ライダーシリーズ『仮面ライダーキバ』(テレ朝系)にて主演を務め、同年、ドラマ『恋空』(TBS系)でも主人公を演じた。舞台『関数ドミノ』(2017)で第72回文化庁芸術祭演劇部門新人賞、映画『愛なのに』(2022)で第44回ヨコハマ映画祭主演男優賞受賞。近年の主な出演作に、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、ドラマ『くるり〜誰が私と恋をした?〜』(TBS系)、映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』(2022)『違国日記』(2024)など。現在、三谷幸喜が5年ぶりに監督を務めた映画『スオミの話をしよう』が公開中、堤真一と初共演で挑む舞台『A Number―数』が上演中。
ヘアメイク:小林純子
スタイリスト:田村和之

●作品情報
映画『スオミの話をしよう』
監督・脚本:三谷幸喜
出演:長澤まさみ、西島秀俊、松坂桃李、瀬戸康史、遠藤憲一、小林隆、坂東彌十郎、戸塚純貴、阿南健治、梶原善、宮澤エマ
製作:フジテレビ 東宝
配給:東宝