30代後半、役者として脂が乗ってきた時期にコロナ禍が

 試練を乗り越え、仕事が軌道に乗っていた30代に、本当の試練がやってくることになる。2020年からの数年を覆った、コロナ禍である。

「36,37歳ごろですね。俳優としてなにもできない時期に、振り返ったんです。“これが終わったら、変えたい。役者としてもう一段階、トライしたい”と。どんなふうにしていけば、人はどう思ってくれるのか、日々の生き方や人との接し方、作品への対峙の仕方……そういったものをもう一度ブラッシュアップしていこうと思いました。あのときは、ひたすらチャージしていた時期でしたね」

ーー撮影はまったくなかったんですか?

「ほぼなかったし、ちょっとできた時期があっても、またストップして……の繰り返しでした」

 奇しくも、初舞台を踏んだのは2021年4月。上川隆也小池徹平らと共演した『魔界転生』は「楽屋挨拶もできないレベルで、人に会えなかった」と話す。

「公演直前、僕も陽性になって、中等症で入院もしたんです。病室は4人部屋で日本人が僕しかいなくて、とある人は医師や看護師さんの言うことを聞かないし、別の患者さんは電話をしちゃいけない病室でいつも夜中に泣きながら電話をしているし、それを聞いて僕も“夜中に勘弁してくれよ~”とちょっと泣いたりして(笑)、寝ているときは悪夢を見て眠れなくて。そんなことがあって退院した翌日にゲネプロがあって、その次の日が本番だったんですよ」