9月25日に昭和以降最速となる初土俵から所要9場所での大関昇進を果たした大の里。身長192cm、体重182kg、石川県津幡町出身の24歳。小学校を卒業後、親元を離れ新潟県の中学に“相撲留学”、日体大に進学後は「アマチュア横綱」に輝くなど数々のタイトルを獲得した。大相撲に幕下付け出しデビューからまだ1年半ほどで優勝2回、大関まで駆け上がった。まぎれもなく、いま最も注目されている力士である。大の里泰輝のTHE CHANGEとはーー。【第1回/全5回】
「謹んで申し上げます。大関の地位を汚さぬよう、唯一無二の力士を目指し、相撲道に精進します」
秋場所、13勝2敗で2度目の優勝を果たして大関昇進を決めた大の里は、昇進伝達式の使者を前に、力強く口上を述べた。
茨城県阿見町の二所ノ関部屋は、早朝から緊張と期待感に包まれていた。東京・両国国技館で、午前9時から開かれる相撲協会の理事会を終えると、部屋に使者の親方がやってくる。後援者やメディア関係者が続々と駆けつける中、紋付袴姿の大の里は、落ち着かない様子で部屋の中を歩くなど、所在なさげな様子を見せる。
こうして10時過ぎ、到着した使者を迎えて、待望の「新大関誕生」の瞬間がやってきたのだった。
伝達式と会見を終えた大の里は、部屋の駐車場で若い力士たちの騎馬に乗って、詰め掛けた地元ファンに手を振る。ようやく新大関に本来の笑顔が戻っていた。