気持ちが変化した12日目の敗戦

 11日目は、危ない相撲で琴勝峰を退けて、後続の霧島らに2差を付けた大の里だったが12日目、相撲巧者・若隆景から粘っこい攻めを受けて、ついに1敗を喫する。

「負けて気がラクになった…というわけではないんですけど、この相撲は“もっとがんばろう!”と思えた一番だったと思います」

 と、振り返った大の里。

 13日目の大関・琴櫻戦はもつれる展開となった。

 攻防の末、土俵際で琴櫻にすくわれて、土俵を早く飛び出したと判定された大の里に軍配は上がらず……。物言いが付き、取り直しの一番は一転、琴櫻を一気に押して、最後は寄り切っての勝利で、12勝目を挙げた。

 相撲協会には、大関昇進の基準が設けられている。

 原則、「三役で3場所の勝ち星が33勝以上」というものなのだが、夏場所小結で12勝、名古屋場所は関脇で9勝だった大の里に関しては、単純計算で今場所12勝以上の勝ち星が必要となる。

 しかし、先場所を9勝で終えたことで、場所前は大の里の大関昇進へのムードは高まらず、今場所は「大関昇進への足がかりの場所」という位置づけとなっていた。

 ところが、13日目を終えた時点で、霧島を含む3敗の3力士に2差をつけての12勝を達成。この勝利は、大関への大きな布石になった。

 迎える14日目は、大関・豊昇龍戦。過去、1勝(不戦勝)3敗で、実際に相撲を取って一度も勝っていない難敵だ。

 大の里が優勝と大関を引き寄せるのかーー。「運命の1日」が迫ってきていた。

(つづく)

大の里(おおのさと)
二所ノ関部屋所属の力士(本名:中村 泰輝)平成12年6月7日生まれ。石川県河北郡津幡町出身。身長/192.0cm、体重/182.0kg
初土俵は令和五年五月場所、同年九月場所に新十両、令和六年一月場所で新入幕を果たす。同年3月場所に平幕で初優勝、そして9月場所では関脇として13勝2敗で優勝し、大関昇進を果たした。