“目フェチ”な尾上右近が惹(ひ)かれた仲野太賀のまなざし
──「目」ですか。
「どんなに隈取り(くまどり)をしていようが、真っ白に顔を塗っていようが、何十キロの衣装を着ていようが、目を見たら相手とのつながりを感じる。フェイクで固められた中に現れる、本当の瞬間にしびれます。僕が歌舞伎を好きな理由のひとつです」
──役者さんの「目」の力は、観客にも伝わります。
「言ってしまえば、うまいとかヘタとか、その人がキレイだとかそうじゃないとか、2000人規模とかの大きな空間になると、関係なくなってくるんですよね。上の客席から見たら、誰が誰だか、正直分からないかもしれない。それでも、どんなに離れていても、不思議と“目”は印象に残る。そこに本当の瞬間が宿るからだと思います。僕ね、目フェチなんです」
──目フェチ(苦笑)。そんな右近さんが、最近惹(ひ)かれた目の持ち主は誰ですか?
「歌舞伎ではなく映画なんですが、11月に公開される『十一人の賊軍』にも出演させていただきまして、試写を見たんです。そのとき仲野太賀くんの目は“やっぱりすげえ!”と思いました」
──仲野太賀さん。
「すごく真っすぐな目をしていますし、彼自身が、そういう人。僕は“芸は人なり”という言葉が好きなんですね。人間性が表現の魅力を左右すると。そのことも、まさに虚と実につながると思うんですけど、太賀くんの目は、本当に印象に残りました」
“芸は人なり”。右近さんは32歳、太賀さんは31歳。同世代の、歌舞伎の外での刺激も受けてCHANGEしながら、表現を豊かにしていく右近さんの“目”も、どんどん魅力を増しているはずだ。
(つづく)
映画『八犬伝』
原作:『八犬伝 上・下』山田風太郎(角川文庫刊)
脚本・監督:曽利文彦
製作総指揮:木下直哉
出演:役所広司、内野聖陽、土屋太鳳、渡邊圭祐、鈴木仁、板垣李光人、松岡広大、水上恒司、佳久創、藤岡真威人、上杉柊平、河合優実、栗山千明、中村獅童、尾上右近、磯村勇斗、立川談春、寺島しのぶ、黒木華
配給:キノフィルムズ