想像以上に純粋な人

――堂本さんの印象を教えてください。

吉岡「私は数日間だけの参加でしたが、現場中も、沢田としてのテンションをすごく大事にされている感じがしました。バラエティ番組などで見てきた堂本さんではなく、“自分ってなんだっけ”と振り返ろうとされている感じでしたし、この映画を撮影している、いまこの時間を大事に噛みしめながら、無理なく自分の心と向き合いながら、撮影されているのかなという印象でした」

荻上「すごく真摯に沢田に向き合ってくださっていましたね。“このキャラクターとして、この次のシーンはこういう感じだろうか、ああいう感じだろうか”と、本当にワンシーンワンシーンの前に、すごく時間を取って話し合いをしながら進めていきました。私自身も悩むところを、お互いにすり合わせていきました。本当に真摯に、真面目に取り組んでくださっていました」

――堂本さんへのあて書きだったわけですが、組まれてみて、違う面が見えたりしましたか?

荻上「あて書きでしたが、実際に一緒にお仕事したら、想像以上に純粋な人でしたね」

吉岡「撮影中に“まる”の写真をたくさん撮られていたので、私はその姿をこっそり観察していました」

――吉岡さんも今回の作品に携わったことで、“まる”が気になって、ついつい反応してしまうことはありましたか?

吉岡「私は特になかったです(笑)」

 主人公は沢田だが、吉岡さん演じる矢島のフラストレーションが響く人も多いだろう。

(つづく)

荻上直子(おぎがみ・なおこ)
1972年2月15日生まれ、千葉県出身。94年に渡米し、南カリフォルニア大学大学院映画学科で映画制作を学ぶ。2000年に帰国。04年に『バーバー吉野』で劇場映画監督デビューし、第54回ベルリン国際映画祭・児童映画部門特別賞を受賞した。06年の『かもめ食堂』が大ヒット。その他の主な監督作に映画『めがね』『僕らが本気で編むときは、』『波紋』など。最新作は堂本剛を主演に迎えた『まる』。

吉岡里帆(よしおか・りほ)
1993年1月15日生まれ、京都府出身。2016年、NHK連続テレビ小説あさが来た』の第108話から登場。丸メガネの「のぶちゃん」として一躍注目を集め、翌年放送の『カルテット』(TBS)で一気に知名度と評価を得るとともに、人気を獲得していった。近年の主な出演作に、ドラマ『時効警察はじめました』『しずかちゃんとパパ』『時をかけるな、恋人たち』、映画『ハケンアニメ!』『アイスクリームフィーバー』『ゆとりですがなにか インターナショナル』『怪物の木こり』など。最新公開作に『まる』。待機作に『正体』。2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』への出演も発表されている。

●作品情報
映画『まる』
脚本・監督:荻上直子
出演:堂本剛/綾野剛/吉岡里帆、森崎ウィン柄本明/小林聡美
配給:アスミック・エース
https://maru.asmik-ace.co.jp/