小学校の頃から「ツッコミ井口」と呼ばれてた

 『オンバト』放送開始は1999年。井口がいう通り、今のように若手がテレビでネタを披露する番組はほぼなく、当時出演していた芸人たちは「ここしかチャンスがなかった」と振り返る。そんな番組に、岡山県津山市の高校生は夢中になった。

「地方だから、お笑いライブには行けないんですよ。だから全国で毎週あれだけ若手のネタが観られたのってすごい貴重で。『オンバト』はそこがすごく大きかったですよね。ただ、別に自分の周りではブームにはなってなかったです。同級生で2〜3人観てるやつがいるぐらいでした」

ウエストランド・井口浩之 撮影/石田寛

 もともとお笑いは好きで、バラエティを好んで観ていた。小学校の頃からサッカークラブで「ツッコミ井口」と呼ばれ、中高生の頃は文化祭に来た他校の生徒から「ツッコんでください」と乞われていたという。

「それはもう、お笑いどうこうというより性格ですけどね。最初は単純に、真面目だったから周りに注意してたら、そういうふうに言われるようになっただけで」

 バラエティやテレビコントと、若手のネタ番組では“面白さ”の意味が異なる。それまでほとんど観る機会のなかった若手芸人のネタは、井口少年にとってどう”面白かった”のか。

「テレビはダラダラ観られるものですけど、ネタはそうじゃなくて、“面白い”と思っているものを4分なりなんなりで見せるわけじゃないですか。その頃そんなふうにはっきり思っていたわけじゃないですけど、そこが観ていて面白かったんですかね。やる側になったらすごい嫌ですけどね(笑)」

 その2年後、2001年には『M-1グランプリ』が始まった。