2022年の『M-1グランプリ』優勝以来、さまざまなバラエティで活躍するウエストランド井口浩之。ツッコミはもとより、愚痴と文句を言わせたら右に出るものがいない口達者ぶりで、仕事は引きも切らない。その文句言いぶりゆえに見落とされがちだが、実はウエストランドはデビュー間もない頃からテレビで着実に結果を残してきた駿才でもある。これまでの芸人人生で井口が感じた、「THE CHANGE」とは――。【第1回/全5回】

ウエストランド井口浩之 撮影/石田寛

「今じゃ考えられないですけど、当時はネタ番組なんて本当になかったんですよ。年に何回かしかテレビでネタを見れる機会がなくて、あったら録画して擦り切れるぐらいビデオを観てました」

 『M-1グランプリ2022』チャンピオン・ウエストランドの井口浩之に、どんなお笑いを観て育ったのかをたずねた。こうしてしゃべる様子は、ふだんテレビで観るときよりはややロートーンだが、それでも速度は変わらない。

「高校に入る頃に『爆笑オンエアバトル』(NHK)が始まったんで、毎週必ず観てました。多分、まだ実家にVHSが残ってますよ。その前の時期に『ボキャブラ天国』(フジテレビ)があったけど、『ボキャブラ』はネタ番組ではないじゃないですか。だからそこに出てた人たち、アンタッチャブルさんとかがネタをやっているのを『オンバト』で初めて観て“こんなに面白いんだ”って思ってました」