「動物のお坊さん」として多くのメディアに取り上げられている横田晴正さんは、曹洞宗長福寺の住職である。横田さんにとっての「THE CHANGE」、人生の転機にはいつも動物がいた。
10歳の時の愛猫との死別に始まり、動物との不思議な縁がもたらした数奇な出来事を経て、動物の死と向き合い続けているーー。

「私の人生の節目にはいつも動物の命がありました」と語る横田さんは、幼い頃に愛猫ミクが人間に虐待されて悲惨な死を遂げた際に“不思議な声”を聞いたことで、その後は傷ついた動物たちを保護したり、道路で亡くなっている動物を連れ帰ったり、動物たちの最期を看取ってあげるようになった。

いじめを苦に切腹未遂、救ってくれたのは猫だった

 そんな横田さんに「人生最大の危機」についてお聞きすると、「生命の危機」が人生で2回もあったという。優しい語り口ではあるが、生命の危機とは穏やかではない。いったいどのような出来事だったのだろうか?

「最初の危機は中学生の時です。自殺しようとしたんです。原因は学校でのいじめです。思い止まることができたのは猫のおかげでした」

 横田さんは、小学校から中学校にかけて壮絶ないじめを経験し、自らの命を断とうというところまで追い込まれていたという。だがこの時も、動物との間で不思議な体験をする。

「当時は不登校という選択肢は考えになく、辛い思いに耐えながら通学を続けていました。まさに地獄の日々でした。そして、ついには家にいる猫までがいじめの対象になってしまったのです。カラスにつつかれて片目がつぶれ、私が保護した猫でした。

 自分がいじめられているせいで、何の罪もない猫にまで危害が及ぶのは耐えられない、いっそ自分が死んでしまえば……。思いつめた私は、家にあった包丁を持ち出して切腹しようとしたのです。

 すると片目がつぶれた猫が、私のもとに抱っこしてくれとすり寄ってきました。私は死ぬつもりでしたので、これが最後になるであろうと思い、抱っこしてあげました。猫は、いつものように私の膝の上に乗りましたが、ただならぬ状況を察知したのか、しっぽで私のことを何度も何度も叩くのです。それまでにそんな行動をしたことは一度もありませんでした。自殺なんてやめなよ、一緒に遊ぼうよ……と、包丁を持って自殺しようとしている私を必死に止めてくれていたのです」

 横田さんは猫を抱きしめ、自殺を思いとどまる。因果応報というのだろうか、助けた猫に助けられたのだ。そして、これからも動物たちの命に寄り添い、動物たちのために人生を捧げようと決意する。まさに「THE CHANGE」といえる瞬間であった。

「その日から私は変わりました。猫に救われた命です。一度は死のうとしたのですから、怖いものはない。人からどのように思われようが、自分の思うようにしたらいい。そう思うと、これまで逃げてきたことに立ち向かえるようになりました。たとえ靴を隠されても、うろたえず冷静に隠し場所を突き止め、私を避けるために机を離そうとする者には自分から机をくっつけていきました。いじめてきた人間に対して、自分なりに対処し続けた結果、次第にいじめはなくなっていったのです」

 猫に命を助けられたことでいじめを克服し、最初に訪れた人生の危機を回避できた横田さんは平穏な学校生活を取り戻した。

 その後さまざまな体験を経て、運命の人と出合い結婚。動物たちを弔うために僧侶になることを決意する。