「板の上にいても」伝わってきた客席の熱量

 2004年、三上博史さん主演で『ヘドウィグ~』が日本で上演されることになる。公演を重ねる中で、今までにない手ごたえを感じていたという。

「日々、客席側の熱が盛り上がってきた感覚があったんです。僕らは板の上にいても、その熱がどんどん増殖していくのが伝わってきました。

 その後、再演もやらせてもらったんですけど、僕にとって大きな経験になりました。そこから20年経って、“ライブの形でやりませんか?”というお話をいただいて。考えてみたら、“音楽いいな”と思った最初に戻るっていうことだな、と思ったんです。20年前の“この楽曲をやりたい”という思いに戻るんだなって。

 でも、『ヘドウィグ~』をずっと待ってくれている人たちもいるなかで、がっかりさせたくないという思いはあって、どういう形がいいのかだいぶ考えました。当時は10センチのヒールでやっていたんですけど、さすがに無理だろうって(笑)。でも、ライブの形で観客に届けられるものがあるとすれば、それを突き詰めたいなと思いました」

三上博史 撮影/冨田望