20代は頭じゃなくて、体で覚える時代だった

 こうした経緯があって、パジャマ党と一緒に作ったのが『欽ちゃんのドンとやってみよう!』(フジテレビ系)、『欽ちゃんのどこまでやるの!?』(テレビ朝日系)、『欽ちゃんの週刊欽曜日』(TBS系)などだった。よく僕が素人や素人同然の人を育てたようにいわれるけど、育てたというより、素人だから受けたんだよね。歌手や俳優にしたって、コメディアンじゃなくて、笑いについては素人だから面白かった。

『欽どこ』で僕の妻役をやってくれた真屋順子さんがまさにそう。番組が終わって打ち上げしたときも「萩本さん、ごめんなさいね。私、最後まで笑いが分からなくて」と言ってた。 そんな真屋さんがいたから、番組はあれだけ長く続いたわけ。幸いなことに、どの番組も視聴率は高かった。でも、あの頃は視聴率なんて気にしなかった。たとえば、裏番組がドリフターズの『8時だョ! 全員集合』(TBS系)だから、僕たちのことをライバル視した人もいたけど、そういう意識は全然ないし、勝とうなんて思いもしなかった。

 振り返ると、20代は頭じゃなくて、体で覚える時代だった。体で覚えたことの答えが出てくるのが、30代以降だったような気がする。さて、問題はこれからだよね。

 実は、僕は老人という言葉が好きじゃない。老人より年寄りという言葉のほうがいいな。なぜなら、老人といわれたら、もうそれ以上逆らえないイメージがあるでしょ。でも、年寄りだと、年という波が寄ってくるような感じがする。だったら、その波をヒョイとよければいい。