東京地検特捜部に突然、逮捕された角川歴彦氏は226日もの間、保釈が認められなかった。角川氏が獄中で身をもって知ったのは、「人質司法」の非人道性と違法性だ。「人質司法」とは、捜査当局が否認や黙秘を続ける被疑者や被告人を長期にわたって身体拘束することで虚偽の自白を強要する、日本の刑事司法の実態のことである。角川歴彦氏の人生の転換点、THE CHANGEについて聞いた。【第2回/全4回】
その洗礼は、まず拘置所に収監される際の身体検査で受けた。
「横になると、看守がすっ飛んでくる」
「服をすべて脱がされ、身体の傷や入れ墨の有無、さらに口の中からワキの下まで隠し持っているものがないかを調べられます。睾丸や肛門も調べられ、“玉は入ってないか”なんてことも訊いてくる。ヤクザじゃあるまいし、東証プライム市場上場企業の会長が男性器に真珠を入れるわけがないですよ。そこまで訊いてくるのは、被疑者の人格を貶めようとしているからでしょう。そういう意図はハッキリ感じられました。
勾留された独居房は3畳ほど。コンクリート上にゴザのような畳が敷いてあるだけなので、冬はしんしんと冷えが伝わってきます。部屋の奥には洋式トイレと洗面台。時計やテレビはありません。録音されたラジオを時間差で聞くことができるだけです。
天井には監視カメラがあって、カメラの視界から外れた場所に移動したり、就寝時以外に横になったりすると、看守がすっ飛んでくる。こうして24時間監視されるのだから、誰だって恐怖にかられます。
朝は7時起床で、朝夕の点呼の際は正座して看守を待ち、自分の番がくると、呼称番号を言わなければいけない。ぼくは8501番。番号の後に必ず“角川歴彦”と名乗ったのは、自分は人間なんだという、ささやかな抵抗からでした」