「看守や看護師と目を合わせてはいけない」

 拘置所内では、看守の命令に服従しなければならなかった。ある看守に「あんたには権利はない。あるのは義務だけだ」と言われたこともあった。


「命令には絶対服従なんだけど、その命令は非常に恣意的でもあるんです。たとえば、廊下で会った収容者はもちろん、看守や看護師とも目を合わせてはいけない。ある看守は“顔を下げ、廊下の真ん中を歩け”と言うし、別の看守は“左を歩け”とも言う。”右を歩け“と言われることもありました。反論は一切、許されません。拘置所内は軍隊の論理に支配され、被疑者には基本的人権がないわけです」

――看守にもいろんなタイプの人がいたということですね。親身になってくれた看守もいたのでしょうか。

「接見室と収容棟の間を移動するときは、車椅子を押してくれる看守と僕の2人きりになります。僕の背中越しに“弁護団がついているだけ角川さんはいいですよ。国がつける国選弁護人はひどい。泣いている人はいっぱいいます”と語った看守もいました。僕が“そうなんですか”と振り向くと、もう黙ってしまう。被疑者の僕とは会話してはいけないという暗黙のルールがあるんです。でも、そんなルールはどこにも書かれていません。
 あるいは、こんなことを言う人もいました。