後悔したツイートでも消さない理由と山田孝之に抱かれた夜

ーーリツート数や「いいね」数も尋常じゃないですよね。

佐藤「なんでだろうね。だってさ、何年か前にさ、“ウェイウェイウェイウェイ”だけのツイートをしたら10万いいねくらいついたのよ。わからない。問いたい。なにがいいねなのかね」

ーーこれまで炎上もないですか?

佐藤「前にプロインタビュアーの吉田豪さんが“佐藤二朗のツイッターほど平和に燃えるツイッターはない”と言ってくださって、うれしかったですね。ただ、酔ってツイートして後悔して落ち込むことはありますよ。妻には“だから酔っ払ってやるな”と叱られます」

ーー後悔したツイートは消さないんですか?

佐藤「その時点で数千のリツイートがついているんだから、消せないでしょ。リツイートしてくれた方たちの反応も消すことになっちゃうから、申し訳ないじゃん」

「優しいですね」と言うと、「保身だよ」と謙虚さか本心か測れない口調で答えてくれるが、ヒヤッとしたこともあった。

 自身が監督・脚本を務め出演もした、山田孝之さん主演映画『はるヲうるひと』(21年、AMGエンタテインメント)は、韓国の「第2回江陵国際映画祭」で最優秀脚本賞を獲得したほか海外で高評価を得た。しかし。

<日本の映画祭ではオール完無視。いや、もちろん。僕たちは賞なんかのためにやってない。ただ、ファックユーくらいのことは言っておきたい>

 こう、ツイートせざるを得なかった佐藤さんに愛のムチをふるったのは、妻だけではなかったという。

佐藤「妻からは、史上最大に怒られたのですが、その夜、孝之や映画のプロデューサー、心配して駆けつけてくれた黒木華と飲んで、安田顕からは電話をもらいました。そのとき、孝之に“ツイッター、やめちまえ”と怒られました。
 そのうえで、“こういうことを書くのは二朗さんらしくていいけど、黙っていれば評価される作品だと思うよ”と言ってくれて。帰り際、孝之がタクシーに乗る前、急に振り向いてガバっとハグしてくれたんです」

 笑いも哀しみも、心の声を漏らす佐藤さんの周囲には愛が絶えないようだ。

■プロフィール
佐藤二朗(さとう・じろう
 1969年5月7日生、愛知県出身。96年に演劇ユニット「ちからわざ」を旗揚げし、全公演で作・出演。名バイプレイヤーとしてさまざまなジャンルのドラマ、映画に出演し、2008年に映画『memo』で監督デビュー。09年には初主演映画『幼獣マメシバ』で注目され、同時期に福田雄一監督作に出演、存在感を発揮する。近年は主演ドラマ『ひきこもり先生』(NHK)、大河ドラマ鎌倉殿の13人』(同)などが話題に。21年公開映画『はるヲうるひと』では原作・脚本・監督を務め、海外の映画祭で最優秀脚本賞を受賞。主演映画『さがす』(22年)では国内の映画祭で最優秀男優賞を受賞した。23年6月に書籍『心のおもらし』(朝日新聞出版)を上梓。