昨年、俳優キャリア50周年を迎えた長塚京三。スタートが、フランス留学中に実現した映画『パリの中国人』の主演だったことも知られる。その姿には、隠し切れない知的オーラが漂う。同時に、ウイスキーのCMでにじませた愛らしさ、ドラマ『ナースのお仕事』や大河ドラマ『篤姫』などで感じさせた親しみやすさなど、さまざまなフィールドで幅広い魅力を輝かせてきた。そんな長塚さんのTHE CHANGEとはーー。【第3回/全4回】
今年の7月に80歳を迎える長塚さん。多くの主演映画に出演してきたが、12年ぶりの主演映画である『敵』は、昨年10月下旬から11月頭にかけて開催された第37回東京国際映画祭にて、東京グランプリ/東京都知事賞、最優秀男優賞、最優秀監督賞受賞の三冠に輝いた。79歳での最優秀男優賞受賞は東京国際映画祭史上最高齢。審査委員長を務めたトニー・レオン氏(『花様年華』『インファナル・アフェア』シリーズ)は、東京グランプリ/東京都知事賞の講評で“純粋で最も気高い形の「真の映画」でした”とコメントした。
「吉田(大八)監督や僕がいただいたのは個人賞。でもグランプリは作品全体への賞ですから、本当に良かったなと思います。なかなか大変な撮影でしたが、スタッフも完成まで本当に頑張ってきました。みんな喜びもひとしおかと思います」
――東京国際映画祭しかり、これまでに授賞式やレッドカーペットなど、華やかな舞台に数多く立ってきたと思います。緊張することはありますか?
「そうですねぇ」
しばし考え込む長塚さん。
――あまり緊張しないタイプですか?
「緊張しているように見せないタイプです。そういうことには、ちょっと才能があるんです。緊張はします。でもしていないように見せられる。この仕事をしていると、ただ緊張していてはできないと分かっているので、していない“ふり”をするのが上手くなりました」