人生で初めての転機は高校時代の寮生活

 高校入学と共に、兵庫県芦屋市の自宅を離れて、埼玉栄高相撲部の寮で、部員たちと共に団体生活を送った。

「母親は反対していました。ひとりっ子だった自分がそんなところで生活できるのか…と心配していたのだと思います。でも、振り返ってみれば、(埼玉)栄での寮生活は、自分の原点になった。人生で初めての転機だったと思います」

常盤川部屋で人生の転機を振り返る湊川親方

 佐藤少年は、けっして大きくない体で、日々、地道に練習に励んだ。その結果、高校3年時は、インターハイでベスト8のほか、国際大会でも優勝を重ねるなど、好成績を残した。
 こうして、在学中の2014年秋場所、貴乃花部屋の門を叩くことになった佐藤少年。生涯のライバルだという阿武咲(おうのしょう)の存在は大きかった。

「小さい頃からライバルだった打越(うてつ=阿武咲)は、高校を1年で中退して、すでにプロの世界に入っていました。
 “打越に勝ちたい、追い付きたい”という気持ちから、1日でも早く大相撲の世界に入りたかったんです」

 四股名は、本名の佐藤。同年九州場所、序ノ口デビューを果たした佐藤は、他を寄せ付けない強さを見せて、7戦全勝で序ノ口優勝。

 さらに、翌年初場所でも序二段優勝を果たして、春場所では三段目に番付を上げるなど、順調なスタートを切った。

(つづく)

貴景勝 貴信(たかけいしょう・たかのぶ)
1996年8月5日生まれ、兵庫県芦屋市出身。 貴乃花部屋より2014年9月場所にて初土俵を踏み、2019年3月場所終了後に大関に昇進。 2024年9月場所をもって引退するまで幕内最高優勝4回などの成績を残した。引退後は年寄・湊川を襲名し常盤山部屋の部屋付き親方になった。