昨年秋場所途中で現役を引退。175センチ、165キロの小柄な体で、2018年九州場所、小結で初優勝。得意の突き押し相撲を磨き、大関昇進後も優勝を重ねた貴景勝。引退後は年寄・湊川を襲名し、NHK大相撲解説も好評の親方の「THE CHANGE」とはーー。【第2回/全4回】
のちの貴景勝こと、佐藤貴信少年が貴乃花部屋に入門したのが、2014年秋場所前のこと。
以降、順調に出世を遂げて、15年夏場所では早くも幕下に昇進した。
こうして迎えた16年春場所は、幕下9枚目。大相撲界の規定では、幕下15枚目以内で7番全勝の成績を挙げれば、十両昇進が約束される地位でもある。
一方、少年時代からのライバル、阿武松部屋の打越(阿武咲=確認)は、15年初場所18歳で十両に昇進。関取として、その地位を保っていた。
春場所最初の対戦相手は、日体大出身、学生横綱のタイトルも獲った大輝(現・北勝富士)。
「中村先輩(北勝富士)は、4歳年上でずっと憧れていた方。1番相撲でそういう方に勝って、本当にうれしかったですね」
貴景勝は、当時を懐かしそうに振り返る。
大輝に勝利し、勢いに乗った佐藤は6連勝。7番相撲は全勝同士、元幕内・大岩戸との対戦となった。
ベテランを相手に落ち着いた相撲を取った佐藤は、叩き込みで大岩戸を下し、7戦全勝で、見事、幕下優勝を飾った。
「東の9枚目という地位でしょう。普通だったら、(十両)昇進はあり得ないですよ。でも、(周囲の兼ね合いから)十両に昇進できた。この時は、師匠(貴乃花親方)も本当に喜んでくれました」