知性がにじむ物静かな役から、狂気をはらんだ人物まで、自在に行き来する俳優・佐野史郎さん。日本のアングラ演劇の最重要人物・唐十郎氏が主宰する「状況劇場」で活躍したのち、映画やテレビへ活動の場を広げ、ドラマ『ずっとあなたが好きだった』(TBS・1992年)で演じたエキセントリックなマザコン“冬彦さん”はセンセーションを巻き起した。
 テレビや映画に欠かせない名優には、ミュージシャンという別の顔がある。佐野さん自身が人生最大の“THE CHANGE”と語る、2020年に発覚した多発性骨髄腫の闘病時も、病室で片時もギターを手放さなかったという。表現者・佐野史郎にとって演技とは、音楽とはなにかをじっくり語っていただいた。【第4回/全5回】

佐野史郎 撮影/有坂政晴

 高熱が続いてもギターを弾き続けていたという佐野さん。純粋に音楽を愛し、音楽を全身で求めている人を、音楽のプロフェッショナルたちは決して見過ごすことはなかった。SKYEをはじめとする超がつくほどのビッグネームが、佐野さんと一緒に音を奏でたいと思う理由が、おぼろげながら見えてきたように思う。

「そうそう。松本隆さんにお会いしたとき、僕を初めて見たときの印象を“懐かしい気持ちがした”とおっしゃったんです。せんえつですが、音楽だけでなく70年代の空気感、時代の息遣いみたいなものを感じていただけたのかなぁと。
 SKYEの皆さんも、同じ世代を過ごしてきたからこそ、あまり多くを説明しなくても分かち合える感覚があったような気がしますね。『ALBUM』に関して言えば、70年代には、僕はいちリスナーだったけれど、もし当時ご一緒して作ったらこのアルバムだったんじゃないかな、みたいな思いもあって。
 ただ懐かしいとか昔の焼き直しをしたいわけじゃないので、スタイルは当時と全然変わっていてもいいんですよ。でも、DNAに刻まれちゃってるんでしょうね、あのころのものが」