「(林)立夫さんが良いというんだから、良いに決まっている」
目の前に死が迫る中で、音楽を作り続けた佐野さん。それは命のあかりをふたたび熱く燃やすために必要な、ある意味での治療だったのかもしれない。そんな佐野さんに対してレジェンドたちは特別扱いすることなく、平常モードで接し、音楽のプロフェッショナルとして至高の音楽を磨き上げていったという。
「皆さん素晴らしい音楽家でプロデューサーですし、4人がそろわなければあのアルバムの音にはなりません。そんな中で、林さんは影のフィクサーのような役割だったと思います。松任谷さんがおっしゃったんですよ、“いつも林に呼ばれるんだよ”って。アマチュア時代に声をかけられてプロデビューし、キャラメル・ママに加入したのも林さんの存在があったからだと。
僕自身も、ご一緒させていただいて感じましたが、林さんは誰に対してもいい意味でまるで容赦がないというか(笑)。“良ければいい”という信念、軸がブレないんです。あの大瀧詠一さんすら、“一番厳しいのは林だった”と証言しているのを聞いたことがありますし(笑)。だからこそ、”立夫さんが良いというんだから、良いに決まっている。間違いない”という確信が生まれたんだと思います」
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「僕はやっぱり俳優ですし、歌もギターもうまいわけじゃないけど、伝えたいことはある。なので、それを心から尊敬し、信頼する人たちとものづくりができ、そして“いいね”と言ってもらえる。その喜びって、特別なものですね。SKYEの皆さんは、その後アルバムを2枚発表し、Billboardでのライブも開催しました。もし……、僕自身は何者でもないですが、ちょっと“媒体”みたいな僕の体質が役立ったのだとしたら、よかったなって」