寺島進の言葉が俳優として進み続ける勇気をくれた

──大先輩からの重みのあるひと言ですね。

「ずっと“前に出たい”っていう欲求がないんです。本当は裏方の方が好きだし、子どものころのバレエ発表会でも、背が低いから前列にいるのですが、後列が好きで、2番や3番目でいいと思う性格。この業界って、1番を狙う気概がないとやっていけないとも言われますが、どうしても1番になりたいという感情が私にはなくて。
 そんなことを寺島さんに話したら、“お客さんや現場の人たちが必要としてくれるから俺はやってきた。できるかどうかなんて自分で決められることじゃないんだって思ってる”と言ってくれました。それ以来“向いていないかも”と思うのはやめました」

北乃きい 撮影/有坂政晴

──時間をかけて、芸能のお仕事にポジティブになれたのですね。

「(芸能界は)スカウトで入ってきた子ばかりでもないし、仕事を始めたばかりのころは、オーディションに行っても、みんな私とは熱量が違いました。だから自分で業界を選んで、気持ちを燃やせる子を素直に尊敬していたのですが、当時彼女たちだって私のことを“スカウトされてすごい”って思ってたのかも。どうであったとしても、俳優として選んでもらえるならいいのかなと。寺島さんの考え方が、ネガティブな考えを変えるきっかけになりました」

(つづく)

北乃きい(きたの・きい)
1991年3月15日生まれ、神奈川県横須賀市出身。2005年にスカウトされ芸能界デビューし、同年「ミスマガジン2005」グランプリを獲得。2007年にはドラマ『ライフ〜壮絶なイジメと闘う少女の物語〜』(フジテレビ系)で連続ドラマの初主演を務める。翌2008年、主演映画『幸福な食卓』(2007)で第31回日本アカデミー賞 新人俳優賞ほか複数受賞。その後も映画では『上京ものがたり』(2013)『僕は友達が少ない』(2014)などで主演を重ね、『ザ・テノール 真実の物語』(2015)で第20回ミラノ国際映画祭 最優秀助演女優賞にノミネートされるなど、演技を評価されている。