漫画家・イラストレーターとして活躍する江口寿史さんは、1977年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)の『すすめ!!パイレーツ』で連載デビュー後、80年代半ばからはイラストレーターとしても活躍。その斬新なポップセンスと独自の絵柄で漫画界に多大な影響を与え、40年以上も幅広いファンに支持され続けている。
 東京日比谷の展覧会を終えた江口さんは、吉祥寺にある仕事場で「THE CHANGE」の取材に応じてくれたーー。

江口寿史 撮影:冨田望

【第3回/全5回】

大成功を収めたイラストレーション展『彼女』

※画像は江口寿史のインスタグラムアカウント『@eguchiworks』より

 2018年にスタートした江口寿史イラストレーション展『彼女』は、全国各地を巡回し、大成功を収めた。金沢を皮切りに、明石、しもだて(筑西市)、青森、旭川、長野、盛岡、千葉で開催され、来場者は合計で12万人を超えた。 

「『彼女』展は当初は金沢の1回限りのつもりだったんです。

 『KING OF POP』(以下『KOP』)の展示と、そこでやったライブスケッチを見た東京新聞文化事業部のA氏が、“次の『KOP』を金沢21世紀美術館でやりませんか? ”とオファーしてきた。金沢21世紀美術館はすごくやりたい会場だったのでOKしたんですが、その年に美術館のスケジュールの都合で会場が押さえられなかったんですよ。

 で、1年後に取れて開催することになったんですが、1年経つ間に僕の中でもう『KOP』はすっかり完結してしまっていた。すっかりやる気が出ないんですよ(笑)。やるなら『KOP』とは全く違う切り口でやりたいと申し出て、じゃあどうやろうということで話し合ううちに、その東京新聞の担当A氏から、“女性の絵だけ集めた現代の美人画のような切り口はどうでしょう”という提案が出た。

 それはいいかもということになったものの「美人画」という呼び名がどうにも古臭くてしっくりこない。そこでまたあれこれ考えてるうちに『彼女』っていう言葉が頭の中に降りてきて、“これだ!”と。

 でもぼくの作品集も展示のタイトルも、それまでは全部横文字のタイトルでやってきて、ここでいきなり『彼女』っていうのも、演歌とか叙情派フォークのタイトルみたいでけっこうな違和感なんで、どう受け取られるかな、と不安はちょっぴりありました。

 でも一方で自分の中ではもう“これしかない”って思ってて。で、打ち合わせの時に担当A氏と展示の監修を務める美術評論家の楠見清さんに、“個展のタイトル、『彼女』にしようと思うんですが、どうですかね”と言ったら“いいと思います”となって。タイトルが決まると内容はそこからどんどん出来てくるもんでね。ぼくはマンガもまずタイトルから決めてましたから。内容がそれほど固まってなくてもね(笑)。