“ツユダク”という言葉を生んだ
――デビュー後の歌番組での思い出などはありますか。
「忙しすぎて覚えてないですね……。“次はこの現場。次はここ”と言われてわけが分からない状態で付いて行って歌う、みたいな。
でも、寝てはいたんですよ。一日で雑誌の撮影5〜6本、テレビ収録3本が入って、それを1週間続けたら翌週は丸々お休み、というスケジュールを組んでもらっていたので。だから“あと◯回寝れば休みだ!”という感じでやっていました」
――印象的な仕事は、ありましたか?
「初めての『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)は、今でも忘れられません。テレビで見ていたときは海のように広い場所だと思っていましたが、自分が立つと“実際には現実的な広さなんだ”と、びっくりしましたね」
――Mステといえば、「𠮷野家」の話で盛り上がっていましたよね!?
「そうですね。タモリさんから好きなものを聞かれて、“𠮷野家のナミ・ギョク・ツユダクです”って答えたら、“そんな言葉、聞いたことがない!”となって(笑)。牛丼並盛に、ギョクは生卵で、つゆはダクダク入れてほしいからツユダク。そしたら、そこから、世間でも“ツユダク”という言葉が使われるようになったみたいです」
――国民的ワードを作った瞬間ですね!
「でも、𠮷野家さんからは怒られちゃったんですよ。 “ツユダク”って頼む人が多くなって、汁がなくなっちゃったみたいで(笑)」
――𠮷野家が困るほどの社会現象に! 巷にはジャケット&ミニスカートでロングブーツの“カハラー”と呼ばれる女性もあふれました。
「すごく嬉しかったです! 最近もジャケットスタイルがトレンドになっていますが、時代は巡るんだなと思いますね」
――カリスマ的人気を実感することはありましたか?
「当時はまだネットが主流ではないのに、海外の方も存在を知ってくれていることにビックリしました。
あと、今振り返ると、すごい経験をしたなというのが、毎回、レコーディングがロサンゼルスとか海外だったことですね。でも、曲を覚えたり、やることが多すぎて、現地を楽しむわけでもなく。スタジオって窓がないから、延々と歌っていると、“今日で何日がたったんだろう……”という感覚に陥るんです」
――寝ずにやるんですか!?
「お風呂に入る暇もなく、スタジオのソファで仮眠して、起きて歌って、ご飯食べて、みたいな感じです。寝ちゃうと起きないので、作業が終わるまではずっと、そんなサイクルでした」
(つづく)
華原朋美(かはらともみ)
1974年8月17日、千葉県生まれ。身長156センチ。1995年に歌手デビューし、『I BELIEVE』『I'm proud』など、ミリオンヒットを連発。現在は歌手活動をメインにバラエティ番組、CMなど多方面で活躍している。