内野さんが演じてみたい役は……
――お芝居の素人だった方が、第二の人生の自己表現のひとつとして“演劇”に触れることのおすすめ点はどんなところでしょうか。
「むしろ、組織の歯車みたいな役割でずっとやってきた方のほうが大事な気がします。 “いい年して、今更自分探しかよ”なんて思うかもしれないけど、フィクションの中でひとつの役割を演じるという大きな充実感が確実にあると思うので、演劇というフィクションがもっとカジュアルになってもいいんじゃないかなという思いはこの作品をやってより感じたことですし、プロの役者だけではなく、例えば、サラリーマンとしてずっと人生を歩んで、その仕事を達成してきた方が、次のステップとして“演じる”ということや何かを表現することはとても素敵なことだと思っています」
――内野さんご自身、人生の半分以上を役者として過ごされ、これまで様々な役を演じていらっしゃいますが、まだやっていないキャラクターは何かありますか?
「いやいや、やっていないことだらけですよ。強いて言うなら、路上生活者や職業を持たない人の役というのはあまりやっていないかもしれないです。要は、自分が面白がることができれば何でもいいんです。お芝居の世界だからこそ、演じることができるものっていろいろあると思うので、例えば人間じゃない役。 “人をおかしくさせる月”とか面白そうだな(笑)」
――月と太陽では、月の方に惹かれますか?
「そうですね。本当は暗い方が好きなんですよ。これまでの芸歴を振りかえると、割と明るい役柄を要求されることが多くて、“陽”や正義に行くことが多いのだけれど、元々は暗くて悪いという志向性が自分の中にあるんです。なので、ちょっと危なっかしい役の方が、役者としては面白いかなと思います」
やってみたいキャラクターをうかがった際、「月」というワードが出てきたときの内野さんからはどこか妖艶さがにじみ出ていて、その一言だけでゾクリとしてしまった。きっといつか、内野さんが面白がって演じる「月」が見られる日がくるであろう。
取材・文/根津香菜子
うちの・せいよう
1968年生まれ、神奈川県出身。NHKのドラマ「街角」でデビュー。2021年に紫綬褒章を受賞。近年の主な出演作に、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」、「ブラックペアン2」(TBS系)、映画「春画先生」、「八犬伝」、「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」、舞台「芭蕉通夜舟」がある。
作品情報
『ゴールドサンセット』2月23日(日・祝)放送・配信スタート
毎週日曜22時※第1話無料放送(全6話)
出演:内野聖陽、小林聡美、中島裕翔、三浦透子、毎田暖乃/和久井映見
坂井真紀、六平直政、安藤玉恵、有薗芳記、津嘉山正種、益岡徹/風吹ジュン
原作:白尾悠「ゴールドサンセット」(小学館刊)
脚本:大森寿美男
監督:大森寿美男 清水勇気Ⓒ白尾悠/小学館 ⓒ2025 WOWOW INC.