『ローレライ』(05年)、『日本沈没』(06年)、『シン・ウルトラマン』(22年)などを手がけ、『シン・ゴジラ』で日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した映画監督、特撮監督の樋口真嗣。ネットフリックスで配信される『新幹線大爆破』のリブート版を監督する彼のTHE CHANGEとはーー。【第2回/全2回】

樋口真嗣 撮影/角田忠良

 新たに『新幹線大爆破』というタイトルの映画を作るにあたり、リメイクではなくて、リブートという形を選びました。

 思い入れの強いファンが多い作品ですが、誰より僕自身がそのひとりです。ですから、原作から何を引用するかについては、自分がどう思うかということが一つ基準になったと思います。現代を舞台にしたら、50年前と何が変わるのかを予測しながら、独立した映画としてのクオリティの高いものを目指しました。

 原作は当時の国鉄から協力を拒否されたんですが、今回はJR東日本さんの特別協力を得られ、ふだんだったら絶対に見ることのできない裏側を見ることができたのは大きかったですね。安全かつ正確な運行のために見えないところで大勢の人たちが動いているんです。

 東北新幹線を貸し切り、走らせながら撮影したんですが、一般の乗客を止めることは絶対許されません。僕らは自分たちもJRの一員だという意識を持って撮影していました。

 今回のリブートでは、原作と違って、草なぎ剛さんが演じる車掌が主人公です。まず、新幹線に爆弾が仕掛けられたとしたら、一番大変な人は誰かと考えたんですね。それはおそらく車掌だろうと。しかも調べてみると、昔と違って今の新幹線は、慣例でいくと運転士以外の乗務員は1人か2人なんです。その人数で何百人もの乗客に対応しなければならない。そこで、車掌を主人公にして、彼がいかに七難八苦を乗り越えていくかって話にしようと決めました。

 この手の映画って、危機的状況に置かれた主人公がスマホで家族の写真を見るようなシーンを入れがちですよね。ところが、JRの人から、それはやっちゃいけないと言われました。なぜなら、新幹線の乗務員は、ロッカーみたいなところに私用の携帯電話を入れ、鍵をかけてから乗務するそうなんです。