映画のアイデアは、まず思いつきから始まります
あくまで映画だと割り切ってスマホを持たせることもできましたが、逆に、その制約の中で何を見せるかを考える方向に切り替えました。映画の中で、主人公は最後まで自分の業務をまっとうしようとします。そのあたりは皆さんに共感を持ってもらえるのではないかと思います。
また、他にもいろいろな職業、いろいろな立場の人たちが、自分の役割を果たそうと行動します。しかし、その足並みがそろわないからこそドラマが生まれます。
そうした映画のアイデアは、まず思いつきから始まります。ただ、僕は記憶力がないので、いいアイディアが浮かんでも、思いついたことだけ覚えていて、肝心の内容を忘れてしまうんです。また、その延長線上でまた別のアイディアが浮かんでくると、最初に思いついたことと頭の中で混じってしまうこともありました。そんな僕に、特撮監督の大先輩の矢島信男さんがこう言ってくれました。「脳みそは、覚えるために使うのはもったいない。思いつくために使うものだ」つまり、記憶する事に脳を使うと、思考の柔軟性が失われると。僕はなんでもメモするべきだと学びました。
もうすぐ60歳です。コロナの影響でブランクができた間に、気がついたら映画の現場も若返り、自分が“年寄りチーム”に入っていました。
衰えは実感していますが、気力や体力を維持するために何か特別なことは特にやっていません。強いて言えばエネルギー源は怒りですね。
見なくてもいいはずなのにネットでエゴサーチしては憤り、エネルギーが湧いてきて「よし、今日も一日頑張るぞ!」という気持ちになるんです。見渡してみると、映画界の先輩たちも皆さん、怒りっぽい人ばかりなんですよね。
樋口真嗣(ひぐちしんじ)
1965年9月22日、東京都生まれ。映画監督、特撮監督。高校卒業後、『ゴジラ』(1984年)に関わり映画界入り。95年に『ガメラ 大怪獣空中決戦』の特技監督を務めて注目され、2002年『ミニモニ。THEムービー お菓子な大冒険!』で映画監督デビュー。『ローレライ』(05年)、『日本沈没』(06年)、『シン・ウルトラマン』(22年)などを手がけた。『シン・ゴジラ』で日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞。
樋口真嗣監督 最新作 Netflix映画
『新幹線大爆破』
あまたの話題作を生み出した樋口真嗣が、名作『新幹線大爆破』を“リブート” ! 主演は草彅剛。JR東日本の特別協力の下、リアルな映像と最新のVFXを融合。息もつかせぬスリルと緊張感あふれるノンストップサスペンスエンターテインメントがここに誕生した。
出演:草彅剛、細田佳央太、のん/ 齊藤工ほか
2025年4月23日 Netflixで世界独占配信開始