作品を通じて、常に自身に問うこと──。

 岡本が参加する作品にも、“死”を扱ったものは多い。

「今回の『みんな鳥になって』もそうだけど、死と隣り合わせで生きている人たちの物語を演じていると、何が幸せなのか考えるようになります。日本は平和だというけど、本当にそうなのだろうか? と。ムワワド作品に参加させていただくことで、平和であること、生きるということを深く考えるし、家族というものを蔑ろにしてはいけないと、改めて感じますね」

 そんな深い作品を、岡本健一と中島裕翔というアイドル……というと語弊があるかも知れないが、人気者のふたりが演じることは、あらゆる世代に一石を投じるのではないだろうか。

「裕翔には、アイドルとして、若い世代をたくさん呼んでもらいたい(笑)。男闘呼組時代からのファンの人たちや、ぼくの舞台を見続けてくれている方々は、目が肥えている人たちが多いんです。女性のお客さんのほうが多いのですが、特に『みんな鳥になって』は、おとなの男性にも見てほしい。もっと言うと、日本という国を動かしているおとなたちにこそ、見てほしい作品ですね」

(つづく)

岡本健一 撮影/有坂政晴

岡本健一(おかもと・けんいち)
1969年5月21日生まれ。東京都出身。85年にドラマデビューし、88年から93年まで男闘呼組として活躍後、主に舞台俳優としてキャリアを重ねる。読売演劇大賞(04年、09年、18年)菊田一夫演劇賞(19年)、紀伊國屋演劇賞(20年)、芸術選奨文部科学大臣賞(20年)、紫綬褒章(22年)を受賞。近年の舞台出演作に、『建築家とアッシリア皇帝』、『尺には尺を/終わりよければすべてよし』、『夜は昼の母』、『Le Fils 息子』『La Mere 母』、『グレイクリスマス』など。演出作品に『地獄のオルフェウス』、『破戒』など。22年7月、29年ぶりに男闘呼組が1年間の期間限定で活動を再開し、話題となった。現在は同メンバーとともにRockon Social Clubとして結成。ADDICT OF THE TRIP MINDSとしても音楽活動を続けている。

舞台『みんな鳥になって』

東京公演:6月28日(土)〜7月21日(月・祝) 世田谷パブリックシアター
兵庫公演:7月25日(金)〜7月27日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
愛知公演:8月1日(金)〜8月3日(日) 東海市芸術劇場 大ホール
岡山公演:8月8日(金)〜8月10日(日) 岡山芸術創造劇場 ハレノワ 大劇場
福岡公演:8月15日(金)〜8月17日(日) J:COM北九州芸術劇場 大ホール

【作】ワジディ・ムワワド
【翻訳】藤井慎太郎
【演出】上村聡史
【出演】 中島裕翔 岡本健一 岡本玲 那須佐代子 松岡依都美 伊達暁 相島一之 麻実れい
【スウィング】
近藤隼 伊藤麗 渡邊真砂珠
公式サイト:https://setagaya-pt.jp/stage/25004/