池袋の映画館を満員にして、調子に乗ってプロを目指した
欲しいおもちゃは全部買ってもらえたし、おやじのコネで後楽園球場の巨人戦をよく見に行っていました。中学1年の頃は『ウルトラマン』の世界にどうしても触れたくて、円谷プロに「見学させてください」って電話をかけたことがあります。当時、子供のそういう問い合わせにもちゃんと対応してくれたんですよね。スタジオで『ミラーマン』(フジテレビ系)の現場を見て、後に台本や小道具もお土産でもらえました。そんな子供時代をすごした僕は、大学時代に映画サークルに入って8ミリ映画を作り始めました。
当時、オタクの最先端をいっていた仲間と知り合い、一緒に作ったのが、『エスパレイザー』(83年)という特撮作品です。低予算の自主映画ですが、石坂浩二さんにナレーションを、『エイトマン』の桑田次郎さんにイラストをお願いしたら、ありがたいことに、お2人とも引き受けてくれました。
池袋の映画館に交渉して上映させてもらったところ満員になりましてね。それで、調子に乗ってプロを目指すことになります。
まずは足がかりとして、CM制作会社に就職したのですが、自分がやることと違うなと思ってやめました。結局フリーになった僕は『地球防衛少女イコちゃん』 (87年)というオリジナルビデオ作品をつくります。レンタルビデオが盛り上がっていた時代なので、けっこう注目を浴びたんですよね。ヒットし、パート3まで制作されました。
(つづく)
河崎実(かわさき・みのる)
1958年8月15日、東京都出身。映画監督、ライター、ラジオDJ。明治大学在学中より映画製作を始め、84年にフリーとなり、『地球防衛少女イコちゃん』(87年)『いかレスラー(04年)『日本以外全部沈没』(06年)などを生み、“バカ映画の巨匠”と呼ばれる。ウルトラシリーズをはじめとする特撮や、梶原一騎、加山雄三、ブルース・リー、昭和歌謡などにも精通し、著作も多数上梓している。2008年、ヴェネツィア映画祭「ミッドナイト部門」に『ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発』が正式招待され、24年にスペインで開催の「アジア夏映画祭」で栄誉賞を受賞。東京都中野区に、今回の撮影場所となったBar「ルナベース」を経営する。
河崎実監督最新作
『還暦高校生』
昭和の「青春学園ドラマ」への愛とオマージュをささげた衝撃作。主演にひかる一平、直江喜一、伝説のアイドルグループ「ビッグ・マンモス」の森井信好、『ウルトラセブン』の古谷敏などが脇を固める。
6月27日全国公開
公式サイト:https://kanreki-movie.com/