イメージするのは植木等さん
僕も、自分の映画が当たって喝采を浴びている場面を常に頭にイメージしています。そうしていたら、実際にヴェネツィア映画祭に招待されたんです。拍手を浴びながら、「こんなこともあるんだな」「またあるといいな」と思いました。結局、去年もスペインの映画祭で賞をもらいました。楽しかったですね。
僕は作品の数が多い方だと思います。なぜこんなに企画がたくさん通るか? それはスポンサーのところに、自信満々で交渉に行くからです。そのときイメージするのは植木等さんですよ。『ニッポン無責任時代』(62年)のような映画で植木さんは、大企業の社長のところにも「いやどうもどうも。やってますか?」って入っていくじゃないですか。あれですよ。ものおじしながら行くより、そっちのほうが絶対にいい。
新作の『還暦高校生』 (25年)は、出資者の方のプロデューサーが『3年B組金八先生』(TBS系)に出ていたひかる一平さんのファンだったことから始まった企画です。今やなくなってしまった青春学園ドラマで、500万で作ったんです。
ひかるさんは42年間留年している還暦の高校生を演じています。『金八先生』で共演した、“腐ったミカン”の加藤優役の直江喜一さんも出ています。
学園ドラマというのは人間の理想を描いています。人生の可能性が全部ある。ただ、僕の作品ですから、それだけじゃなくて、SFの要素も含まれています。笑福亭鶴光さんの無駄に長い下ネタのシーンもある。ぜひとも、好事家の皆さんに観ていただきたいですね。
これからもバカ映画をずっと撮り続けていきたいです。だって面白いですから。
河崎実(かわさきみのる)
1958年8月15日、東京都出身。映画監督、ライター、ラジオDJ。明治大学在学中より映画製作を始め、84年にフリーとなり、『地球防衛少女イコちゃん』(87年)『いかレスラー(04年)『日本以外全部沈没』(06年)などを生み、“バカ映画の巨匠”と呼ばれる。ウルトラシリーズをはじめとする特撮や、梶原一騎、加山雄三、ブルース・リー、昭和歌謡などにも精通し、著作も多数上梓している。2008年、ヴェネツィア映画祭「ミッドナイト部門」に『ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発』が正式招待され、24年にスペインで開催の「アジア夏映画祭」で栄誉賞を受賞。東京都中野区に、今回の撮影場所となったBar「ルナベース」を経営する。
河崎実監督最新作
『還暦高校生』
昭和の「青春学園ドラマ」への愛とオマージュをささげた衝撃作。主演にひかる一平、直江喜一、伝説のアイドルグループ「ビッグ・マンモス」の森井信好、『ウルトラセブン』の古谷敏などが脇を固める。
6月27日全国公開