「究極的にはそこに人が生きていたこと、人が生きて、営み、想い、命を宿していたこと。そのことを生身で伝えること」
――今の時代だからこそ、映画をはじめとするエンターテインメントで伝えられることはたくさんあると思うのですが、池松さんは俳優としての役割や使命みたいなものをどう捉えていますか?
「それは大きすぎる問いですね。簡単には答えられないものですが、まずは作品によって役割や使命というのは全然違うと思います。それが映像作品の多様性だと思います。個人的にはそれがどんな作品であれ、より良い社会を目指すことがあたりまえに前提であってほしいとは思っています。
その上で俳優としての役割を問われると、究極的にはそこに人が生きていたこと、人が生きて、営み、想い、命を宿していたこと。そのことを生身で伝えることが使命なのかなと思います。すみません大きな答えになってしまって」
筆者が池松さんを取材するのは今回で3回目なのだが、毎回変わらず思うのは「穏やかで優しい語り口の人」という印象だ。本作で池松さんが演じる真田は、自分のことよりも人のことに気を配り、心を痛めてしまう性格。その根底にある強さと優しさは、池松さん自身にも共通しているように感じた。その一方で、「俳優とは」について語る瞳の奥には、静かに燃える炎のようなものを見た気がした。
(つづく)

取材・文/根津香菜子
いけまつ・そうすけ
1990年7月9日、福岡県生まれ。2001年、劇団四季ミュージカル『ライオンキング』のヤングシンバ役でデビュー。トム・クルーズ主演『ラスト サムライ』(03)でスクリーンデビュー。その後数々の映画やドラマに出演し、数多くの映画賞を受賞している。昨年は映画『ぼくのお日さま』、『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』、『本心』が公開され、今後の待機作としてNHKで8月に放送される『終戦80年ドラマ シミュレーション 昭和16年夏の敗戦』、映画『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』、さらに26年度NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』が控える。
『フロントライン』
監督:関根光才、企画・脚本・プロデュース:増本淳、
出演:小栗旬、松坂桃李、池松壮亮、森七菜、桜井ユキ、美村里江、吹越満、光石研、滝藤賢一、窪塚洋介
https://wwws.warnerbros.co.jp/frontline/
6月13日(金)より全国公開中