『私を抱いてそしてキスして~エイズ患者と過した一年の壮絶記録~』(文藝春秋)で、第22回 大宅壮一ノンフィクション賞を受賞し、『極道の妻たち(R)』『バブルと寝た女たち』などの作品が映像化されている作家・家田荘子。作家活動以外にも僧侶としても活動する彼女のTHE CHANGEとはーー。【第2回/全2回】

家田荘子 撮影/柳敏彦

 

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 住み込み先の姐さんは、本当にすごい人でした。今日の命が分からないという「親分付き」の夫を持つ身なのに、平然といつも笑っているんです。

 実はその方は、映画『極道の妻たち(R)』のかたせ梨乃さんの役に一部重なっています。映画はフィクションですが、彼女が実際に話した言葉が、かたせさんのセリフとして使われています。

 私は、広域7団体と、その他の組織の姐さんたちも、取材を重ねて行きました。

 こうして書き上げたのが、『極道の妻たち(R)』です。映画化もされて、話題にしてもらいました。

 ただ、ここで男性の同業者から、とてつもないバッシングを受けることになります。新聞社の第一線の男性記者たちから、 「女はいいよね、寝ればいんだから」って会うたび言わ

れました。当時はセクハラという言葉もなかったですから、女性がいい仕事をすると、当たり前のように、そう言われてしまう時代でした。

 当時の働く女性はみんな同じようなことを言われてきたと思いますが、皆さん、笑いながらうまく切り抜けて来たのです。ただ、私はバッシングに耐えきれず、心を崩してしまいました。

 そのときに結婚していた夫がアメリカ人で、ちょうど転勤で米本土に戻ることになり、私は仕事も辞めて、逃げるようについていきました。

 ところが、ここでエイズの患者さんに出会ってしまうんです。

 日本では、まだエイズは始まったばかりの病気ゆえに、さまざまな偏見を持たれていました。知識が不足しているので、握手をしただけでうつるってテレビでMCが言っていたこともありました。