バンドを組んで活動していた学生時代。「仮歌」との出合いはひょんなことから
そもそも、山下さんが天職である仮歌の世界に入ったのも、ある意味で運命のいたずらだったのかもしれない。大学1年生のとき、バンドのボーカルとして東京・吉祥寺のライブハウスに立ったことから、彼女の歌人生は急展開した。
「大学で音楽サークルに入ったものの、なんとなく堅苦しさを感じて。もっと自由に音楽を楽しみたいと思い、当時好きだったエリカ・バドゥさんの曲をカバーするバンドを組みました。そのバンドでライブハウスに出演したとき、楽屋で“仮歌・コーラスのお仕事に興味はありますか?”と声をかけられたんです。
仮歌がどんな仕事かまったく分からなかったけど(笑)、歌えるなら楽しそうだなと思い、“やりたいです!”って即答したんです。それが、音楽業界に入った瞬間ですから、私の最初の“THE CHANGE”ですね」

初仕事は、当時人気のアイドルグループ・ミニモニ。のコーラスだった。そこで、雷に打たれたような体験をしたそうだ。
「最初の仮歌は、ミニモニ。さんのコーラスでした。仮歌を入れるときは、作家さんから“コンペに出すから〇〇さんっぽく歌って”と言った感じで、誰かに似せて歌うことが多いんです。誰かをまねて歌うことも、洋楽オタクの私にはJ-POPそのものも新鮮で、すごく楽しいなと感じました。
なにより、大学生でアマチュアの私がプロの方々に囲まれ、ひとつの曲を一緒に組み立てて行くことに、すごくワクワクしたんです。そのとき、“この仕事に携われるなら、一生貧乏でもいい!”と思ったんですよね。それくらい仮歌という仕事に魅了されたんです」