リア・ディゾンから直々にコーラスのオファーが届く
温かみのある愛らしい歌声が山下さんの魅力だ。しかし、彼女はソウルミュージックのディーヴァ(歌姫)たちのようなクールなボーカルにあこがれていたため、長年自分の声にコンプレックスを抱いていたという。それを吹き飛ばしたのは、あの“黒船”だった。
「かわいい系に似合う、ミニモニ。さんをはじめ、ハロー!プロジェクトなどのキュートな女性アイドルの仮歌を歌わせていただくことが多かったんです。個人的にはソウルミュージックが大好きで、クールでかっこいい歌声や歌い方に憧れが強かったので、自分の歌声とのギャップに悩んでいました。
そんなとき、人気絶頂のアイドル、リア・ディゾンさんから“専属のコーラスをやってほしい”と指名されたんです。どうして私なんだろうと思って尋ねたら、リアさんの歌声はクール系のため、ふわっとした柔らかさやかわいらしさをプラスしたいと思ったんだそうです。私のふわふわしたかわい系の成分を足すことで、リアさんのアルバムに奥行きや立体感が増すと言っていただき、そのときやっと、“私の声でいいんだ!”と、自分の声に自信が持てたんです。20代前半の出来事ですね」
自分の歌声に自信が持てるようになったこともまた、歌い手として大きな“THE CHANGE”だったはず。次回は、山下さんがなぜ仮歌の女王になれたのか、その秘密に迫りたい。

やました・えり
18歳で仮歌歌手(ガイドボーカル)としてスタジオミュージシャンの道を歩み始め、その25年間にわたる精密な仮歌・コーラス経験から、業界では「仮歌の女王」と称されている。多くのCMソングや人気アーティストの録音に隠れた立役者として活躍。2016年にはTBS系ドラマ『家族ノカタチ』のメインテーマ『Unpredictable Story』とサブテーマをellie名義で手がけ、作詞・歌唱で注目を浴びる。今年25年「作曲家・三木たかし生誕80周年記念プロジェクト」企画で、作曲家・三木たかし氏の未発表曲『水の都』で歌手デビューを飾る。また、ellie名義ではDJ作品やアーティストの楽曲にフィーチャリングボーカルとしても多数参加しており、幅広いジャンルで活躍中。山崎製パンの「ランチパック」、大塚製薬の「ファイブミニ」など多数のCMソングにも携わっている。