漫画好き&酒好きにとっていつまでも忘れられない名作といえる、酒うんちく漫画のパイオニア『BARレモン・ハート』が今年、40周年を迎える。作者である漫画家・古谷敏三さんの孫であり東京・大泉学園に実在する『BARレモン・ハート』の店主・古谷陸さんと、40周年記念作品の1冊を手掛ける“呑む文筆家”として知られる山内聖子さんのふたりが語り合う、THE CHANGEとは。【第3回/全5回】

漫画『BARレモン・ハート』のマスター 撮影/三浦龍司

 酒好きなら愛読者も多いだろう、漫画家の故・古谷三敏さんによる酒うんちく漫画のパイオニア『BARレモン・ハート』(1985年~2021年)が、連載開始から今年で40周年を迎える。それを記念して10月9日にコミックス『BARレモン・ハート 40周年 世界の名酒セレクション』が、翌日には7種類の酒の基礎知識を収録した酒辞典『BARレモン・ハート 意外に知らない酒の基本知識』が発売する。この日は2冊の監修を務めた古谷さんの孫で、実在するバー「BARレモン・ハート」(東京・大泉学園)の店主・古谷陸さんと、後者の執筆者である“呑む文筆家”山内聖子さんが、「BARレモン・ハート」に集った。
 お酒談義に花を咲かせるふたりだが、陸さんはウイスキー、山内さんは日本酒と、それぞれ愛好酒があるという。まず陸さんの原体験は、「家にあった」と話すのだった。

古谷陸さん(以下、陸)「うちは母が離婚しているので、家では祖父、祖母、母、弟、僕の5人で生活していました。この環境のメインには祖父ーー古谷先生の仕事があって。早朝は僕らが小学校・幼稚園に行くために起きるし、夜は先生がずーっと仕事をしているし、24時間ずっと電気がついている家でした」

山内「誰かがなにかしら活動している家だったんですね。先生がお酒を飲んでいることも?」

「もちろんありました。編集さんと打ち合わせをしながら、試飲をしたりするので、その日の夕方は先生は寝ています(笑)。それで夜中に起きて仕事が始まる。それで僕に“こんなお酒で次の話を描こうと思うんだよね。これいいワインだからさ”と教えてくれたり。僕は“へー!”って(笑)」