肩の力を抜いて楽しんでほしい

ーーお酒を深く知っている方って、人間を読む力に長けている側面があるように思います。

「人間は酔えばダメになる、ということは知っています(笑)。めちゃくちゃお腹いっぱいのときにいいごはん食べても苦しいだけなので、無理をしないタイミングで美味しいと思えるときに高いものを選ぶのが、僕はいいと思うので。それを意識づけられればコントロールできるようになってくるんです。僕らがやっているバーの世界は嗜好品の極地にいるので、楽しいお酒ならただただ友達と飲むのがいちばんですよね。ひとりでとか、楽しい空間を共有したいとか、プラスアルファがあってバーがあると思っています。そういう意味で、人の機微は見たほうがいいなと思います」

山内「バーの方は特にそうですよ。私も週1回だけ日本酒バーの女将をやっていますが、お酒を飲むタイミングはすごく考えます。"今じゃない”とか。あとはスペックを気にしてほしくないので、次の日も"あれ美味しかったな。なんだっけ”くらいの感覚で肩の力を抜いて楽しんでほしいなと思います」

 酒を知ると、不思議と人のことも知りたくなる。だからこそ、我々は酒の場に行きたくなるのかもしれない。

(つづく)

古谷陸(ふるや・りく)
1990年9月13日生まれ。幼少期より祖父・古谷三敏の代表作『BARレモン・ハート』に影響を受け、学生時代からお酒の歴史や文化を学ぶ。高校・専門学校在学中にバンド「ゴールデンボンバー」のローディーとして「鶏和酢里紅」としても活動。2015年より東京・大泉学園の『BARレモン・ハート』を継承。現在は古谷敏三作品の管理を行いながら、バーテンダー、ブランドプロデューサーとして活動中。

山内聖子(やまうち・きよこ)
1980年生まれ、岩手県出身。呑む文筆家、きき(※漢字変換お願いします)酒師。22歳のときに飲んだひと口の日本酒がきっかけで魅力に開眼しライターの道へ。2011年より週1度、日本酒バー「后バー有楽」のママを務める。著書に『蔵を継ぐ』(双葉文庫)、『いつも、日本酒のことばかり。』『夜ふけの酒評 愛と独断の日本酒厳選50』『日本酒呑んで旅ゆけば』(3冊共にイースト・プレス)、新刊に『酒どころを旅する』(イカロス出版)。