「BARレモン・ハート」実店舗が1つしかないのに「2号店」と名乗る理由とは？　店主・古谷陸ד呑む文筆家”山内聖子が語り合う「酒と場」【特別対談】

実際には１店舗のみだが「２号店」

　現在、陸さんが立つ『ＢＡＲレモン・ハート』は実際には１店舗のみだが「２号店」と名乗っている。その理由は、漫画の舞台となる『ＢＡＲレモン・ハート』が「本店」であるというはからいがあるからだ。

山内「『ＢＡＲ・レモンハート』は理想的なお店ですよね。マニアックにも振れるしゆるくもなれる。居心地がすごくよさそう。やっぱり古谷先生が描いたお店を目指しているんですか？」

陸「空気感は目指したいと思っていますが、やっぱり現実社会なので同じようなお店にはならないとわかってます。ここらしい“楽しい空気づくり”をしていければと思っています」

山内「どんな空気ですか？」

陸「気取らずにカジュアルにしつつ、いいお酒はいいお酒で価値のあるものとして見てほしいので、金銭的な部分で適正にしていくことと、ただ堅すぎると記憶に残らなくなってしまうので、その辺のバランスは取りたいと思っています。だから、“この酒を頼むなら、今じゃないよ。酔った勢いで頼むものじゃないよ”とか、お客さんごとのアプローチには重きをおいています」

山内「じゃあ出さないときもあるんですね」

陸「全然あります。"やめときな。今は水で帰りな”って」

山内「本人のためですもんね」

陸「都心部でやっているわけではないので接待で来る方はほぼいないですし、あくまで家に帰る前のくつろぎの場ですからね」