実は事前にやりとりが「迷惑かけないから」「生放送テロです」

――いい経験ですか?(笑)

「要は、自分の勘というものを確認させてもらいましたし、司会者というのは圧倒的に孤独なんだなと味わわせてもらいました。あのとき、リハーサルの段階で立ち会わせてもらっていたんです。実際に生放送で連呼した“FM東京”の部分に、“古舘伊知郎”と入れていた。26回。明らかに仮当てしていると感じました。それで勘が走って楽屋まで行きました」

――清志郎さんの楽屋にですか?

「そうです。それで“あれは、本番どういう言葉に刺し替わるんですか。自分だけには伝えておいてもらわないと、司会なので”とお願いしました。でも“大丈夫、絶対に古舘君には迷惑かけないから”と優しく言われて。騙されました。本番、あれですから。かっこよかったですけどね。悪態つくだけついて、歌い終わったときにスタンドを前に“ざまーみろ、こんちくしょー”って言って終わり。最高のカタルシスだったと思いますよ。生放送テロですから。でもこっちはたまったもんじゃない」

――(苦笑)。

「騙されて被害を受けたと思ったけれど、あのとき勘が走って楽屋に行くという行動を自分はしたわけで、自分の勘は悪くないなという自信ができた。それは忌野さんのおかげです。そしてあの歌を聞いていたとき、周りにはいろんなアーティストの方々がいたんですけど、みんな大喜びしていて、それがカメラに映っていた」

古舘伊知郎 撮影/河村正和