進路指導のときにポロッと「音楽をやりたい」

 僕が通っていたのは工業高校でしたから、卒業後は、ほとんどの人が就職します。僕はやりたいことがなかったんですけど、進路指導のときにポロッと「音楽をやりたい」と言っちゃったんです。

 そしたら先生が、「うちの卒業生で、大学で音楽をやっているヤツがいる」と。それで、広島電機大に進学して、その人と同じ音楽サークルに入りました。

 その“卒業生”というのが、今一緒に『ユニコーン』というバンドをやっている、ドラムの川西幸一さんです。

 僕はそれまで、バンドを組んだこともなければ、ミュージシャンの演奏をまともに見たこともなかったんです。だから、ちゃんとドラムセットを叩いている人を初めて見たのが川西さんだったんですよ。そこから音楽にのめり込んでいきましたね。

 ライブハウスに出入りするようになり、そのうち、そのライブハウスでアルバイトも始めました。

 そうすると、だんだんそっちのほうが忙しくなってしまって、大学に行ってもサークルの部室で仲間とセッションして、授業にも出ないで帰ってきちゃう。それで、通ってもいない大学に学費を払っているのはおかしいなと、大学を辞めることに決めました。

 それが僕の“人生の転機”だったかもしれません。

手島いさむ(てしま・いさむ)
1963年、広島県生まれ。1987年、ロックバンド『ユニコーン』のギタリストとしてデビュー。ヒット曲を多数生み出し、人気バンドとなるが、1993年に解散。以降、さまざまなアーティストへの楽曲提供やライブ出演、プロデュース活動を行う。2009年には『ユニコーン』が再結成、2012年にはバンド『電大』を結成し、現在も精力的に活動中。