2007年のデビュー以来、次々とベストセラーを生み出し続ける小説家・湊かなえさん。11月27日には、宗教・宗教2世を題材とした29作目となる新刊『暁星(あけぼし)』を上梓した。とどまることなく豊かに表現し続ける湊さんの、THE CHANGEとは。【第1回/全5回】

湊かなえ 撮影/有坂政晴

 11月27日に29作目となる長編小説『暁星(あけぼし)』を発売した湊かなえさん。これまで、誰しも興味がありつつも目を塞いでしまうような人間の深淵をのぞかせてくれる作品を生み出してきたが、今作は冒頭からいっきに心を掴まれる。

 思わず思い浮かべてしまうのは、実際に起きた政治家襲撃事件のことだ。


 あらすじには、こうある。

[現役の文部科学大臣で文壇の大御所作家でもある清水義之が全国高校生総合文化祭の式典の最中、舞台袖から飛び出してきた男に刺されて死亡する事件がおきた。逮捕された男の名前は永瀬暁、37歳。永瀬は逮捕されたのち、週刊誌に手記を発表しはじめる。そこには、清水が深く関わっているとされる新興宗教に対する恨みが綴られていた]

 大物の死亡事件と、新興宗教。

 あらすじ通り、あの事件を想起させるシーンからはじまり、主人公が「週刊誌への手記」として明かしていくのだが湊さんは「日本を震撼させた事件を、おもしろおかしく書いたのではありません」と語る。

「いつか宗教二世の方の話を書きたいと思っていました。新興宗教に入る人は “特別な人” と思われがちですが、自分の人生を振り返ったとき、そちらのほうに流れていってもおかしくない分岐点が何回かあったと思うんです。そう考えたときに、誰でも周りの人や環境に左右された結果、 “そちら”を選択する可能性があるのではないかなと思ったんです」