2007年のデビュー以来、次々とベストセラーを生み出し続ける小説家・湊かなえさん。11月27日には、宗教・宗教2世を題材とした29作目となる新刊『暁星(あけぼし)』を発売する。とどまることなく豊かに表現し続ける湊さんの、THE CHANGEとは。【第2回/全5回】
11月27日、湊かなえさんが発表した29作目となる新刊『暁星(あけぼし)』 。実在の事件を入り口にした物語は、読み進むにつれて、読者の不意を突く数々の仕掛けがちりばめられており、湊作品特有の一筋縄ではいかない展開が続く。
冒頭は小説の一節から始まり、報道記事、SNSの書き込み、そして現役大臣を刺殺した犯人である主人公の手記ーーが連なり、徐々に物語の輪郭が浮かび上がり、引き込まれる。
さらにそれだけに留まらず、後半はその事件の場に居合わせた作家が書いた小説として物語が進んでいく。前半のノンフィクション、後半のフィクションが交差し重なりあうことにより、物語は色がつき、輪郭ができて、そしてラストで見事な景色を見せてくれる。
そうした手法をとったことについて、湊さんは自身の大ヒット作『告白』を例に教えてくれた。
「『告白』もそうだったように、小説を書く中で、ひとつの物事を視点を変えて描いたらどういう見え方がするのか、ということは意識しながら執筆しています。いつも“ 今回は、どことどこに視点を置こう” ということを考えて書いているなかで、本作はひとつの事件をフィクションとノンフィクションで書いてみたいなと思ったんです」