ふたつの物語が交差する瞬間を描いてみたい

ーーたしかに、前半は報道、SNSの書き込み、犯人の手記という、事実に基づいた文章の連なりでした。手記を書いた主人公は、家族を崩壊させた宗教への復讐のために、人殺しを犯したということがわかります。ですが、後半の小説を読むと、「あれ!? これって!? え、どういうこと!?」の連続で、興奮しました。

「ありがとうございます。“この物語はノンフィクションです” と言われたら、みんな、そこに書かれていることは、すべて事実であると鵜呑みにしているのではないでしょうか。嘘は書いていないけれど、“あえて書いていないこと” はたくさんある。そして逆に、“フィクション ” という冠をつければ、むしろ“ノンフィクション ” よりも書けることの幅は広がるのではないかなと。
 そういうことを書いていくと、より一層“フィクションとノンフィクションってなんだろう” と考えるようになり、ひとつの事件をフィクションとノンフィクションという視点で見ることで、どういう景色が見えるのだろう、というところから始まりました」

 そうして「誰が手記を書いて、誰が物語を書こうか」と膨らませてゆき、その時系列もそれぞれ変えた。

「ひとつを時系列通りに、もうひとつを遡るようにして書いたら、また捉え方が変わってくるのではないかなと考えました。また、そのなかでふたつの物語が交差する瞬間を描いてみたい。そんなことも考えていました。こんなふうに、いろいろなことに挑戦したいなと思ったんです」