苦労だらけの東京ストリート陸上

難問が出題されることでも有名だった『クイズ$ミリオネア』。それを最後まで正解したというのだから、ただごとではない。

為末「いちばん最後の質問だけ覚えていまして、“『ガリバー旅行記』に出てくる小人の身長は何センチか?”という問題でした。4択なので当てずっぽうで答えたら、当たったんですよ。それが放送されたら、“ありがとうございます!”って反響が関係各所あちこちから来て、やらざるをえなくなりました(笑)。イベントをやりたい気持ちはあったんですけど、まさか賞金を穫れるとは思っていなかったので、具体的には何も考えていませんでした」

 為末さんは『クイズ$ミリオネア』で得た1000万円をもとに、東京・丸の内で「東京ストリート陸上」をプロデュースする。観客の目の前で選手が走り、跳んでみせることで、陸上の魅力をダイレクトに伝えるイベントだった。もちろん、初めての試みで苦労はあったようだ。

為末「まず、公道使用の許可を取るのが大変なんですよ。三菱地所さんの協力でなんとかなりましたけど。費用も最初はスポンサーを募って、1000万円に足そうと思っていたのですが、公道では企業名を出せないということで、なかなか集まりませんでした。
 ただ、お客様はたくさん来ていただけて、大成功でした。陸上競技の認知度も確実に上がったと思います」

 現役を退いてから、為末さんはさまざまな事業やプロジェクトに携わり、陸上の普及に尽力している。その始まりは『クイズ$ミリオネア』だったともいえる。

■為末大(ためすえだい)
元陸上選手。1978年広島県生まれ。2001年に開催された世界陸上の400メートルハードルで、スプリント種目としては日本人初のメダルを獲得する。05年の世界陸上でもメダルを獲得。00年のシドニーオリンピック、04年のアテネオリンピック、08年の北京オリンピックに出場。12年に現役を引退し、現在は執筆活動やスポーツに関するさまざまな事業に携わる。近著は『熟達論』(新潮社)