俳優・佐藤浩市の出演作リストは驚くべき長さだ。1980年のデビューから映画、ドラマに出演しつづけ、2023年は横浜流星と共演する主演作『春に散る』をはじめ、公開される出演映画は実に9本になる。佐藤さんにとっての「THE CHANGE」とはなんだったのかーー。【第3回/全4回】

佐藤浩市 撮影/三浦龍司
佐藤浩市 撮影/三浦龍司

ーー今回の『春に散る』という映画で、佐藤さんの中で変わったものはありますか?

「あまり、扇の要っぽくしないでやりたいな、っていうのはありました。主人公を善としたくない。そこにいる人は決して強くもなく、普通の人でいたいな、という。強さもあり、弱さもある。そういうふうに思っていましたね」

ーー説得力のある芝居のために準備していることは?

「背景的なものを一切語らないでやったんですが、置かれている状況を含め、なんとなくそれが見えてくる、っていうふうには絶対なるはずだ、と思ってました。
 どうしても日本人の丁寧さで、いろんなことを作品の中で説明したがるでしょう。でも、それがなくても意外にわかる、っていうところはよかったです。
 そこが、うまい具合にみんなの努力というか、合致して見えたっていうことだと思います」

ーー共演の片岡鶴太郎さんや哀川翔さん、オールドチームの3人で何かお話をしたりはしたんですか?

「いや。なかったです。それもなかったことで、逆にうまくいきましたね。原作ではもっとキャラクターがいっぱい出てきて、いろんなことが語られる。でも、映画では背景を語らない。
 映画って、本当はそういうもんでいいはずなんですよ
 山口智子さんと僕も、決して2人は恋人のような関係ではなかった、ってわかるでしょう? 2人にそういう思いは多少あったんだけど、言い出せずに数十年が過ぎてたんだろうな、ってちゃんと伝わる。
 そんなことをね、セリフで言っちゃったらつまんないのにみんなセリフで言うじゃん。それが今回はなかった。非常にうまく成功した形の一つじゃないかな」