「ただ、一つだけ言えるのは、映画館で見たほうがよかったな、って後悔する映画はある、ということです」

ーー映画を配信で見る人も増えていますが、佐藤さんのなかで、大きい劇場で見てほしかったり、スクリーンへのノスタルジーみたいなのはありますか?

「これは一概に、映画館で観るのがいいよ、って言ったところで、今だと2000円払うわけですよね。それですぐに配信されるものもあるから……。

 ただ、一つだけ言えるのは、映画館で見たほうがよかったな、って後悔する映画はある、ということです。
『春に散る』という映画は、劇場で見たほうが得した気分だなって思いますし、最後の試合のシーンはやっぱり客席で、みんなで観たほうがいい。
 そういうところだよね。本当に。その取捨ができるかっていうことが、いま配信を見る方々も含めて、求められているんだと思います。

 配信でもなんでもいいから観てくれ、っていう映画も当然あります。必ず劇場で見てほしい、とは言わないですよ。
 ただ、これは劇場で絶対見るべきだ、っていう感覚、自分のアンテナを研ぎ澄ましてほしいですね」

■佐藤浩市 さとう・こういち
1960年12月10日生まれ。多摩芸術学園映画学科に在学中の1980年、NHKドラマ「続・続事件 月の景色」で俳優デビュー。『青春の門 自立篇』(82)で映画初主演。以降、映画ドラマへの出演多数。『忠臣蔵外伝 四谷怪談』(94)『64 ロクヨン 前編』(2016)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。
2022年のNHK大河『鎌倉殿の13人』での「上総介(かずさのすけ)」の壮絶な生き方死にざまは、多くの人の記憶に残る。
父・三國連太郎とは「人間の約束」(86)、「美味しんぼ」(96)、「大鹿村騒動記」(11)で共演。17年に俳優デビューした長男・寛一郎と『一度も撃ってません』(2020)、『せかいのおきく』(23)で共演。2023年は横浜流星と共演の主演作『春に散る』を筆頭に9本もの出演映画が公開される。
また音楽活動としては、10月7日に恵比寿ザ・ガーデンホールにてライブ『役者唄』を開催。

●映画『春に散る』
不公平な判定で負けアメリカへ渡り40年振りに帰国した元ボクサーの広岡仁一は、同じく不公平な判定で負けて心が折れていたボクサーの黒木翔吾と偶然飲み屋で出会う。仁一に人生初ダウンを奪われたことをきっかけに、翔吾は仁一にボクシングを教えて欲しいと懇願。やがて2人は世界チャンピオンを共に⽬指し、“命を懸けた”戦いの舞台へと挑んでいく。
監督:瀬々敬久
原作:沢木耕太郎「春に散る」(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
出演:佐藤浩市 横浜流星
橋本環奈坂東龍汰 松浦慎一郎 尚玄 奥野瑛太 坂井真紀 小澤征悦 / 片岡鶴太郎 哀川翔
窪田正孝 山口智子
配給:ギャガ
©2023映画『春に散る』製作委員会
8月25日(金) 全国公開
公式サイト gaga.ne.jp/harunichiru