芸人・板倉俊之の独特な世界観は多くの人から支持されている。お笑いコンビ・インパルスで極上のコントを生み出してきた才能は小説家としても花開き、小説デビュー作の『トリガー』は各方面から絶賛。6冊の作品を世に送り出した。開設した自身のYoutubeチャンネルも人気を博している板倉さんにとっての重要な変化「THE CHANGE」とはなんだったのだろうか?【第3回/全5回】

板倉俊之 撮影/片岡壮太

 板倉さんはこれまでに小説を6作出版している。芸人としての活動や、YouTube撮影の合間を縫っての著作活動は驚異というほかない。2023年8月には5年ぶんの澱(おり)を出したという初のエッセイ集『屋上とライフル』を上梓。執筆活動の始まりを聞くと、今の姿からは想像できないような“作家としての第一歩”があった。

「最初に“トリガー”という作品を書き始めた時は、パソコンが全く使えなかったので大学ノートにボールペンで書いていたんです。でも、それだとすでに書いた箇所を前に持ってきたり後ろにしたりっていう入れ替えができないですよね。一番最初に出てくる人物の名前を“三上”にしたのも、手書きで疲れるからできるだけ画数を減らすためにその名前にしたんです。

 それでさすがに手書きはもう無謀だっていうことに気づいて、いったん作業は遅れるかもしれないけど、パソコンを覚えようって決心して、友達に使わなくなったパソコンをもらいました。でも最初はどうやって使っていいか分からないから“これどうやって打つんだよ!”みたいにイライラしながら覚えていったんですよ」

 6冊もの小説を書きあげた作家の第一歩が大学ノートとボールペンという事実には驚くほかないが、板倉さんのあふれ出る文才には、執筆ツールなどを凌駕する力強さがあったいうことかもしれない。そんな板倉さんはふだん、どんな環境で執筆しているのだろうか。